山形家庭裁判所鶴岡支部 昭和31年(家イ)37号 命令
に関し、本件調停の終局に至るまで売買、贈与、抵当権の設定及びその他一切の処分をしてはならない。
若し正当な事由がなくこの命令に従わないときは五千円以下の過料に処する。
(家事審判官 三浦克己 調停委員 佐藤政吉 調停委員 阿部吉郎)
申立の趣旨
相手方は申立人に対し別紙目録の土地建物を申立人から贈与を受けたことのないことを確認し、且贈与による所有権移転登記の抹消手続を為すよう調停を求める。
申立の実情
相手方は申立人の長男でありその弟二郎及敏吉並に実母とめも現存して何れも申立人と共に肩書地居宅に同居して居る。
申立人は別紙目録記載の宅地及家屋を所有し、その所有権登記をしていたが申立人は上記のように妻及相手方並弟等と同居しているので相手方にのみその財産を贈与する意思なく、若し死亡した場合には遺産は法定の割合で相続せしめる心算で居たので本件宅地家屋を相手方に贈与したことはないのに拘らず、相手方は申立人の印鑑を盜用したのか或は偽造したのか不明であるが、昭和二十六年十二月七日附申立人から相手方に贈与した旨の証書を偽造し同月十一日贈与による所有権移転したように登記申請手続を為しその旨虚偽の登記を完了した。
相手方は又申立人が曽て小作して居た他人所有の田畑を申立人不知の間に恰も相手方が小作人であつたかのように申立てたためらしく昭和二十二年六月二日自作農創設特別措置法に基き相手方名義で政府から買受けたものとして所有権移転登記をしていた田畑について鶴岡市○○町○○○番地○○商事株式会社に対する鶴岡市大字○○○○○○番地野口次郎の金六拾五万円の債務(相手方も連帯債務者なるやも知れぬ)のために昭和三十一年四月三十日抵当権を設定し、その登記をした事実があるので本件土地家屋も相手方の所有名義のままにして置いてはこれと同様申立人不知の間に売却又は抵当権設定等の処分をされる虞なしとせず、斯くては申立人及その妻等はその居住家屋を失う虞あるから申立人は相手方に対し如上の偽造登記を抹消し速に申立人の所有名義に戻すよう再三交渉したが、相手方は飽くまでも正式に贈与を受けたものであるから登記を抹消する必要なしと抗弁して申立人に反抗し、時には暴行雑言を敢てして容易に応じないから本申立をするのである。